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はじめての方へ。
研究者としてキャリアを始め、バイオインフォマティクスの会社を起業しました。17年になります。
いまは、ライフサイエンス×AIを事業にする仕事と、いろいろな業界の経営者や、挑戦する人と話すことに、いちばん時間を使っています。
ここでは3つのことを書いています。
・解析の道具とデータの早見(朝)
・技術を事業にするときの学び(昼)
・異業種の経営者との対話から気づいたこと
技術を事業にしたい人、新しい挑戦を始めたい人とつながれたらうれしいです。
タンパク質結合設計の生成AIが、実用ワークフローに入り始めた——RFD4-ProteinaなどがNVIDIA BioNeMo経由で創薬プラットフォームに統合されつつある。
従来の構造予測から、配列と構造を同時に生成してバインダーを設計する方向へ。実験との往復で精度を上げる仕組みも進んでいる。
ただし、予測はあくまで候補出し。最終的に何を実験で確かめるかは、まだ人間の判断が必要。
起業して最初の1年、いちばん大変だったのは営業でした。
何者でもない自分に、仕事を頼む理由はない。
そこで起業前から仕込んでいたのは、技術的な発信。
そして、直接会ってからの雑談が決め手でした。
専門の引き出しがあると、相手の困りごとを聞く話題には困らない。
売り込むより、相手の状況を聞く方が向いていたのかもしれません。
【保存版】公共のエピゲノムデータ、どこから取るか早見。
・ヒト・マウスの標準:ENCODE Portal
・組織・細胞を広く:IHEC Data Portal
・転写因子結合をまとめて:ChIP-Atlas / Cistrome DB / ReMap
・単一細胞クロマチン:CATlas
・DNAメチル化:EWAS Atlas / GDC
同じ細胞型でもアトラスごとに名前の粒度が違う。取ってきたらCell Ontologyで揃える。保存推奨。
起業する前、所属ラボで衝撃を受けたことがあります。
超優秀な臨床系の研究者が、徹夜明けのような状態でExcelを使ってデータを手作業で延々と直していた。
その作業は、少しプログラミングができれば10分で終わる内容でした。
「どんなに優秀な研究者でも、解析の壁で研究が遅くなる」
この現実を何度も見て、2009年に会社を立ち上げました。
技術を事業にするとき、最初に問うのは「何ができるか」ではなく、「誰の、どの手間が減るか」だと思います。
【保存版】単一細胞RNA-seqの品質管理と前処理、道具早見。
・生データから:Cell Ranger / STARsolo / kallisto|bustools
・ダブルット除去:Scrublet / DoubletFinder
・QCとフィルタ:Seurat / Scanpy(ミトコンドリア割合・遺伝子数)
・正規化とバッチ補正:SCTransform / Harmony / scVI
・可視化:UMAP / t-SNE(解釈はクラスタリングとセットで)
バッチ効果やダブルットを見逃すと、後の解釈が全部ずれる。最初にここを固める。保存推奨。
タンパク質の構造どうしを、速く、より正確に並べられるようになった——LoL-align が Nature Methods に掲載され、Foldseek の中から使える。
構造の比較は、速いが粗い Foldseek と、正確だが遅い TM-align や DALI を使い分けるのが普通だった。
LoL-align は、残基どうしの距離から「相同な対応らしさ」を確率で見積もり、確かな対応から少しずつ広げていく。著者らの評価では、TM-align や DALI より感度が高く、5〜20倍速い。Foldseek で候補を絞ったあとの並べ直しとして組み込まれている。
ただし、スコアは問い合わせのタンパク質の長さや形で変わり、別のタンパク質の結果どうしはそのまま比べられない。評価も著者ら自身によるもの。
【保存版】変異の効果をまとめて実験で測るデータの、解析道具早見(DMS・MPRA)。
・DMS(タンパク質の変異を網羅的に測る)の集計とスコア:Enrich2/DiMSum/dms_tools2
・結果の公開と検索:MaveDB
・予測モデルと比べる基準:ProteinGym(DMSを集めたベンチマーク)
・MPRA(制御配列の活性をまとめて測る)の前処理:MPRAflow
・MPRAの差の検定:MPRAnalyze/mpralm(Bioconductor の mpra)
DMSのスコアは、何で選んだか(結合・安定性・増殖)で意味が変わる。ほかの研究や予測モデルと比べる前に、何を測ったスコアかを確かめる。保存推奨。
起業して最初の1年、いちばん大変だったのは営業でした。
何者でもない自分に、仕事を頼む理由はない。
そこで、起業前から仕込んでいたことはブログでの技術的な発信。
そして、直接対面してからの雑談が営業の決め手でした。
専門的な引き出しを蓄積しているので、お客様との話題には困らない。
営業が苦手な専門家は、売り込むより、情報発信と相手の困りごとを聞くほうが向いているのかもしれません。
【保存版】日本人のゲノムと変異の頻度、どこを引くか早見。
・日本人の全ゲノムの頻度:jMorp(東北メディカル・メガバンク機構。版ごとに人数が増える)
・日本人の参照ゲノム配列:JG シリーズ(jMorp で公開)
・日本人の頻度と gnomAD を1画面で:TogoVar
・京都大学のデータベース:HGVD(Human Genetic Variation Database)
・臨床での解釈:MGeND(臨床ゲノム情報の統合データベース)
・個人レベルのデータ(制限公開):JGA(NBDC の審査を経て利用)
・GWASの結果:NBDC ヒトデータベース
gnomAD では珍しい変異が、日本人では珍しくないこともある(逆もある)。病的かどうかを考える前に、集団ごとの頻度を見比べる。保存推奨。
解析で、いちばんよくある失敗の1つ。
ゲノムの版が違うデータを、そのまま比べてしまうこと。
座標がずれて、本当はない差が出てくる。
会社の数字でも、同じことが起きると思います。
部署ごとに「売上」や「案件」の数え方が違うまま比べると、本当はない差で議論が始まる。
比べる前に、定義をそろえる。
地味ですが、これだけで会議はずっと短くなります。
【保存版】小さなRNAと、長い非コードRNAの解析道具早見。
・miRNAの定量と新しいmiRNAの探索:miRDeep2
・小さなRNAのデータの品質と由来の確認:miRTrace
・ウェブで一通り回す:sRNAbench(sRNAtoolbox)
・miRNAの名前と配列:miRBase
・miRNAの標的の予測:TargetScan/miRDB
・非コードRNAをまとめて引く:RNAcentral/Rfam(検索は Infernal)
・新しい転写産物がコードするか、しないかの判定:CPC2/CPAT/FEELnc
・lncRNAの注釈:GENCODE
miRNAの名前は、miRBase の版によって変わることがある。論文の結果と比べるときは、まず版をそろえる。保存推奨。
米国人類遺伝学会(ASHG)2026が終わって、帰国の途につきます。
4日間の学会では多くのことが得られたので、整理して社内で共有・フィードバックしつつ、今後の事業戦略にも活かしていきます。
空港へ向かうバスが偶然一緒になった昔の同僚との議論で、
「AI活用が大きなテーマになる中、AIに質問したり指示を出したりできる人材育成が重要」という結論になりました。
バイオインフォマティクスやデータ解析はAIで加速度的に進みますが、「データの意味を理解し洞察を得て、データを活用する、社会実装する」ことは人間だけが担うテーマで、生成AIの普及でこのテーマがより重要というか目立つようになってきました。
すべての生命科学研究者がAIを活用して、データから洞察を得られるように、より早く研究が進められるように、活動していきたいとおもった、そんな5泊の出張でした。
今から飛行機に乗って帰国します!
研究で評価される道具と、お金を払ってもらえる道具は、別物だと思っています。
研究では、新しくて、精度が高いことが評価される。
事業では、相手の困りごとが1つ減るかどうかで決まる。
〔本人確認:17年の仕事で「最新の手法より喜ばれたこと」の実例を1文。例「最新の手法より、結果を明日の会議で説明できる形にしたことの方が喜ばれた」〕
技術を事業にするとき、最初に問うのは「何ができるか」ではなく、
「誰の、どの判断が楽になるか」。
解析の仕事で、早く結果を出す人に共通していること。
手法に詳しいことより、「どこに何があるか」を知っていること。
公共のデータ、すでにある道具、相談できる人。
ゼロから作る前に、すでにあるものを探せる人は速い。
事業も同じだと思います。
新しいことを始める人ほど、最初に「地図」を持つことが効く。
その分野で、誰が、何をしているか。
それを知るだけで、遠回りの半分は避けられます。
他人に頼ることも、ときには重要です。
研究者だった僕が、会社をつくったときの話。
背中を押してくれたのは、
まわりの環境が大きく変わったことと、
身近な人が応援してくれたことでした。
最初の1年で、いちばん大変だったのは営業。
何者でもない自分が、仕事を取ってくる。
これが本当にきつかった。
研究者だったことで、苦労したこともあります。
研究は、周りの支えはあっても、最後は自分ひとりで完結することが多い。
でも事業は、チームで戦うもの。
チーム戦に慣れるまでに、時間がかかりました。
一方で、得したこともあります。
専門の引き出しが多いので、お客様との雑談には困らなかった。
環境が変わるときは、挑戦のタイミングなのかもしれません。
応援してくれる人がいるなら、なおさら。
AI導入の相談を受けたとき、最初に聞くことは3つです。
①その結果で、誰の行動を変えたいか
②いま、その行動は何を根拠にしているか
③結果が出たら、社内で誰が受け取って動くのか
モデルやデータの話は、そのあとで十分。
この3つに答えられない相談は、技術的にできても、だいたい途中で止まります。
最初に「誰が動くか」を決めておくと、小さく始めても前に進みます。
【保存版】リボソームプロファイリング(Ribo-seq)解析の道具早見。
・品質の確認と P サイトの補正:riboWaltz/RiboseQC
・翻訳されている ORF を探す:RiboCode/Ribo-TISH/ORFquant/Ribotricer
・翻訳効率の差を検定する:Xtail/riborex/deltaTE/anota2seq
・公共データをゲノム上で見る:GWIPS-viz
・前処理のコツ:先に rRNA の配列に当てて、外してからマッピングする
Ribo-seq の読み数の差は、mRNA の量の差でも起きる。同じ検体で RNA-seq も取り、翻訳効率として比べる。保存推奨。



