普段はSF作品のレビューを垂れ流しています。こちらもぜひどうぞ。
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有川浩『図書館戦争』
武器を取ってでも検閲に屈しない図書館がある。
その姿に殺伐とした今のSNSを見た。
SNSには検閲官はいない。でも、いつの間にか批判や炎上を極端に避ける風潮ができあがっている。権力によらない検閲は何よりも怖い。顔のない検閲官には抵抗することもできない。
タイムラインで目に付くのは、炎上を狙った強い言葉と、誰も傷つけない無難な言葉。慎重で、少し踏み込んだ意見は見られなくなる。
一方で、自由を叫ぶ者もいる。
だが言論の自由は、他者の尊厳を踏みにじる権利ではない。匿名の罵倒は標的を黙らせ、それを見た者まで黙らせる。自由を名乗る暴力こそが、空気という検閲を育てている。 皮肉なことに、作中の検閲法が掲げた大義も、人権を侵害する表現の取り締まりだった。自由を免罪符にする者が増えるほど、締め付ける雰囲気が醸成される。
実在の図書館の宣言も、国家だけでなく、個人や団体の圧力と、それが生む自己規制にまで反対している。敵は権力だけではない。
守るべき自由と、守らなくていい暴力を分けること。血の流れないSNSで、わたしたちの図書館戦争はもう始まっている。
#読了
本編はこんなに堅くない。鬼教官と新人隊員の掛け合いに笑いながら読める。そのバランス感が名作だなーと改めて思った。
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「どれくらい生きるつもりの生き方か」
答えに詰まった人こそ、終わりの決まった世界を一度味わって欲しい。
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自分はいったいなにを読んでいるのだろう。そう思うような、長く曲がった暗い道を手探りで歩いているような読み味。
フランスからの独立後、不安定な政局にあるカンボジアを舞台とした群像劇には、個性豊かなキャラクターが現れては退場する。生きることすら困難な時代。事実、ポル・ポト支配下には国民の4人に一人が犠牲となっている。
似たような名前や地名が覚えられない。話があちらこちらに行ったり来たりして分からなくなる。遠慮のない凄惨な描写に溢れている。史実モノかと思いきやしばしば現れる超自然的な現象をどう受け止めてよいか分からずとりあえず読み進めるしかない。
……というように読者の負荷は軽くない。
物語も終盤というところで、群像劇のように思えたものは袂を分かった二人の人生を構成する挿話だったことが分かってくる。理不尽な時代に翻弄された人々が遺したものを、すべて背負って生きる二人のたくましさに圧倒される。
荒々しくも力強い大河のような小説。若く大成する前の著者が持つ情熱と作品の舞台や題材が反応して創り上げられた、その瞬間にしか産まれようがなかった名作。
保険は「守りの商品」だと思われがちだが、私はむしろ、大きなリスクをとれない庶民が効率よく資産運用するための攻めの道具だと考えている。
保険は期待値でいえばマイナスで、確率的には損をする。その代わりに「安定」が手に入る。
人生は一回きりで、命も一つ。ゲームなら期待値を極限まで追えばいいが、現実では最悪の事態だけは避けたい。それが人情だ。だとするとやっぱり保険は守りの話のように思える。
だが、資産運用を含めたリスク設計までスコープに入れると見え方はけっこう違う。もし、保険に入らないなら、投資したお金が病気や事故への備えを兼ねることになる。いざというとき治療費が払えなくなるので、大きく減るおそれのある運用はできない。わたしのような資産に余裕のない庶民ほど、この縛りは重い。
保険に入れば、一人では避けられない不運を、何万人もの加入者で分け合える。不測の事態への備えを保険に任せられるから、投資では攻めた運用ができる。生活に必要なお金だけを手元に残して、そのとき最も効率がよいと思えるところに投資できる。
安定を取る行為と、お金を増やす行為を切り分けられる。これが保険の最大の価値だと思う。
高額療養費や傷病手当金などの公的制度があるから不要、という意見も見たが、それは備えるべき額を決めるための材料。制度も資産も織り込んで、自分が背負えるリスクを天秤にかける。必要ないなら入らなくていい。必要な分だけ入り、あとは効率的に投資する。ただそれだけ。
得したか、損したか。病気になったかならないかは結果論と捉えています。
一カ月遅れの映画「オデュッセイア」感想まとめ
–ネタバレあり!--
◆SFを期待していた浅はかな脳みそへのフルスイング
・そろそろインセプションやインターステラーみたいな超大作SFをやって欲しいのに、なんでギリシャ神話なんだよーと正直思っていた。
・その”なんで”への答えが明確に用意されていたので個人的には超納得、満足した。
◆木馬の偽計への後悔が、神話の約束事を壊した
・その答えは「世界を壊した男」を描くためだった。
・本作は、オデュッセウスの後悔がホメロスの神話と対をなす軸になっている。
・後悔とは木馬をアテナ神への贈り物と偽って潜入し、都市を知略で蹂躙したこと。
・当時のギリシャ神話は空想や物語ではなく、人々が思想や社会規範、倫理を共有して社会を形成するための唯一無二の装置だった。
・その約束を逆手に取り、秩序を壊してしまった。
◆世界の針を進めた男
・神話による前提を共有した敵味方が正面から向きあう、ある意味牧歌的な時代が終わる。
・誰もが偽計の可能性を脳に植え付けられた、疑心暗鬼な時代へ不可逆に変化した。
・これによってギリシアに暗黒時代が到来し、ほどなくアリストテレスが科学という次のパラダイムシフトをもたらす。
・世界を破壊するのは鉄でも船でも歩兵でも火でもなく“アイディア”だった。
◆ノーランの他作品との繋がり
・“アイディア”が世界を壊す話といえば「インセプション」。
・世界を破壊した男の後悔は、もちろん「オッペンハイマー」に共通する。
・様々なテーマを一級のエンターテインメントとして仕上げながら、根底に太い強固なノーランの哲学を感じさせる。
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Xで語られない #かっこいい理系用語
『ウィスパリングギャラリーモード』
日本語ではささやきの回廊モードという厨二心を分かりきった訳語が用意されている。
大聖堂で発見され、現代の物理学にも応用されているという名実ともに(?)最強の理系用語
難解過ぎる最新の理論物理学や宇宙論を数式なしで可能な限り説明してくれる名著。
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